恋文日和 003 64+α、蔵馬からへ
わざわざ手紙なんてって、君なら言いそうだね。
でも、なんて言うか…うまくいかないから。
いまだにぎこちないままで彼氏とか彼女とか言えるかどうかは疑問なんだけど…
君は頭のいい人だから、口で言い合っているといつの間にか勝負になっていたりする。
そうじゃなくて、オレが君に言いたいことはもっと、つまり…
64で終わりにしておきたいとは思えないんだ、このところ、心底。
、君自身が自分のことやオレのことをどう思っているかはわからないけど、
義理で付き合ってるわけじゃないよ。
それだけ覚えておいて、間違えないでほしい。
オレはいくらでも言葉を繕うことが出来るからなんて、君はいつも言うけど。
素の感情をさらすことは、長く生きていろいろな手段を知ったオレにはとても恐いことなんだ。
言葉を繕うのは自衛本能みたいなものだよ。
本当は、飾りもなにもないストレートな言葉で君に伝えられたらと思うんだけど、
それがいちばん難しくて、どうしても口ごもってしまう。
言いたいこと、本当はもっとあるんだ。
口で言えないことも手紙なら…なんて言葉を真に受けてとりあえずペンを持ってみたんだけど、
やっぱり言えないものは言えないな、難しいよ。
ちょっと待って、ちゃんとちょうどいい言葉を探すから、ちょっと待って。
の癖でしょう、オレの言葉に裏の意味を探すのは。
そうやって言葉遊びになって勝負になって、
オレは最初は告白のつもりだったのにいつの間にか張り合っていたりする。
だからとりあえず、直接言うのはやめたんだ。
メールっていう方法もあったんだけど、なんだか…届くのが簡単すぎる気がして。
気持ちが届くまで、水がしみわたるようにゆるやかに時間はかかると思うんだ、それが理想というか。
今日だけは邪推しないで、オレの言葉をそのままの意味で聞いて。
君が好きです。
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