大地が揺れている。

その賢さは人間という種を生物たちの頂点に君臨する存在へと押し上げたけれど、

自然の身震いの前には為すすべもない。

報道が国中に、世界中に発信するおびただしい量の情報、

何をもってしても、くずおれた大地に立ち尽くす人々の感情は、真実伝わりはしない。

ある大きな災害から、十年の月日が経ったとニュースが告げる。

十年前の冬に、彼はテレビでその惨状を目の当たりにした。

その頃、彼と彼の仲間達の物語は爆発的な人気で、彼のファンはもちろん大勢いたそうだ。

映し出される映像の中に、そこに住んでいた誰かが愛してくれていただろう自分の姿が目に入る。

赤く長い髪と緑の瞳の少年の姿は、色の沈んだ画面の中でひどく目を引いた。

そうして流れゆく幾多の映像を見ていて、彼はただそうしていることのほかに何をすることもできなかった。

誰かが命を吹き込んで初めて、自分の手足は動きを取り戻す。

一身に受けている愛情を返すことも出来ずに、失われるものの大きさと痛みは募ってゆく。

彼はきっと、黙り込み目を伏せ、やがては泣いた。

何が言えるだろう。

何も言えはしない。

たとえようもなく大きな力のその前に、何も言えず何もできずにいる彼にはただ思うことだけが残った。

俺はここにいます。

ここに立っています。


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